地上の星
学校だより9月号 校長巻頭言より
誰かに促されたわけではないのに、自主的に玄関前に立ち、登校してくる人にあいさつを呼び掛けることを続ける子どもがいます。
通学の途中、横断歩道で停止してくれた車に対して、横断し終わった後、深々と頭を下げてお礼の気持ちを伝える子どもがいます。
配り物を後ろの人に渡す際に、「どうぞ」と一声掛けて手渡しする子どもがいます。
次の授業の教室に移動する際に、出しっ放しになっていた他の人の椅子をそっと机に戻す子どもがいます。
図書室で本を借りる際に、本棚の中で倒れている本を立てて整える子どもがいます。
昼休み終了時、グラウンドに転がっていたサッカーボールを拾い、片付ける子どもがいます。
学校生活の中での、ともすれば埋もれがちな場面。やらなくても学校生活は当たり前のように流れていきます。やらなくても大きな迷惑が掛かることではありません。
でも、さりげなく、自然体で行動する子どもが確かにいます。このような子どもの姿に、キラリと光るものを見る思いがします。
中島みゆきさんの代表曲「地上の星」には、次のような歌詞があります。
「地上にある星を誰も覚えていない。人は空ばかり見てる。」
「名立たるものを追って、輝くものを追って、人は氷ばかり掴む。」
人はどうしても、活躍して名を挙げた人、賞賛を浴びる人、有名な人に目を向けてしまいがちになります。あたかも天空で光り輝く星のような存在の人です。しかし、世の中には、その存在は目立たないけれど、人知れず頑張っている人はたくさんいます。本当はとても価値があるけれど、誰も見向きもしないことをしている人はたくさんいます。あたかも地上で光る星のような存在の人です。
学校にも、天空で光り輝く「天上の星」のような存在ではないけれど、目立たず、人知れず、価値のあることをさりげなく頑張っている「地上の星」のような存在の子どもはたくさんいます。
毎朝、玄関近くにある「いずみちゃん」のモニュメントのボードに、心温まるメッセージをしたためる職員がいます。
昼休みに子どもとともにグラウンドや体育館に駆け出し、汗だくで遊ぶ職員がいます。
体育用具室をこまめに整理し、子ども等が使いやすいようにしている職員がいます。
校内掲示板に算数のおもしろ問題を貼り出し、子どもの学びを支える職員がいます。
休日に、身銭を切って研修会に参加し、自らの力量を高めようとする職員がいます。
漫画キャラクターを描き、教室を楽しい雰囲気にしている職員がいます。
目を転じると、こんな職員の姿も見えてきます。これも、人知れず頑張っている「地上の星」に違いありません。
ボランティアで力添えをしてくれる保護者や地域の方々がいます。
登下校の見守りをしたり、子どもに元気の出る声掛けをしたりする保護者や地域の方々がいます。
家庭の中にも、地域の中にも「地上の星」は存在しています。
学校も、それを取り巻く世界も、何と数多の「地上の星」に囲まれていることか。そんな幸せを感じながら、あれども見えずの「地上の星」を探し続けながら、1学期後期、そして、2学期の教育活動を進めてまいります。